第178章

予選はまだ続いていた。

酒井初音は酒井正志を連れて個室へ戻ると、あらかじめ用意していた救急箱を取り出し、彼の顔に薬を塗ってやる。

会場を出るとき、群衆の中から湿った、陰のある視線が自分に刺さっているのにも気づいた。探るような、警戒するような目。

振り返った瞬間、初音の視線は――落ちぶれた武井太一とぶつかった。

武井太一は全身傷だらけで、いまは誰かに支えられながら、ようやく立たされている。酒井正志の背後で采配を振るっているのが初音だと、当然わかっているのだろう。探るような目つきが、しつこく絡みつく。

だが、もう負けた男だ。

いまさら何ができる。初音は最初から相手にしなかった。

そ...

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